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企業に所属する研究職のアウトプット練習帳

書評・読書感想雑文~働く君に贈る25の言葉 / 佐々木常夫 / WAVE出版~

 こんにちは.いざブログを立ち上げてみると何をどういう風に書けば自分のためのアウトプットになるのかよく分かりません.とりあえず記事を定期的に投稿しながら考えて良くしていければいいかなと思います.

 今日はとりあえずここ一年で読んだ本の中で適当なものをレビューしたいと思います.

働く君に贈る25の言葉 / 佐々木常夫 / WAVE出版

働く君に贈る25の言葉

働く君に贈る25の言葉

 

  学生の頃に見聞きしていた仕事とは~みたいな言葉は全く刺さっていない,と社会人になって思います.学生から社会人になって変化する環境や求められることというのは思っていたより大きい.どんな心構えをもって日々生きていこうか…と考えなければ,一端の社会人になれないような気がしていたので,何かしらの指針を求めるために読んだのがこの本です.きっかけは兄からの薦めでした.兄は目的があってこの本を手に取ったわけではなく,貰ったから読んだ,程度の認識だったようです.

 概要としては,新入社員~若手社員向けに社会人人生の指針となる著者の言葉を格言っぽく集めたビジネス系自己啓発本です.仕事っていうのは…というビジネスマン的立場からの言葉や,人生とは…という人生の先輩的立場からの言葉を25個集めています.筆者は東レでキャリアを積み,取締役,経営研究所社長を歴任され,また政府の男女共同参画会議議員を務める人とのこと.どういう繋がりか調べていませんが,ワークライフバランスのシンボル的存在だそうです.他にもビジネス書寄りな自己啓発本を著しています.奥様やご子息のご病気の面倒を見ながら激務を勤め上げただけあって,働くことやそれこそワークライフバランスについてたくさん思うことがあるのではないかと感じました.

 25の言葉そのものには大して感銘は受けなかったし(コラコラコラ~~ッ(`o´)),すべて紹介するのもブログとしてどうなの,と思うので,私がくみ取った著者の考えでなるほどと思ったことをご紹介することにします.

・ビジネスとは予測のゲームである

現状を把握し,将来を見極め,戦略を実行するゲームである,とのこと.仕事とは先回りをすること,他人よりも先んじて動くことが重要である.そういう意味で仕事をうまく回す手段として,何事も一歩先の行動をするための習慣づけが大事であると述べています.例えば始業時刻の1時間前に出社し,一日のTo doを確認しておく,とか,仕事のメモをノートにとり,たまに見直しておくことで小さなことでも即応できるようにしておく…など.私に特に刺さったのは上司に進捗を聞かれている時点で既に出遅れているという部分です.進捗確認で露骨にイライラしている上司はいないと思いますが,心はざわついているのかもしれない.

・成長するには制約をかけることが重要

人間というものはストレスがかかった状態でこそ成長できる,と著者は考えています.

失敗して自分の無力さに打ちひしがれてもそこは成長のチャンスととらえるべきであると述べています.確かに心理学的にも人は悔しいと思ったときに成長するってDaigoが似たようなこと言っていた気がしますね.例えば自分で掛ける制約(=ストレス)として早めの締め切り設定を挙げています.これは効率化という成長が見込める上,これを達成することは,↑の先回りすることを意味していると言えそうです.

・優秀な人に学べ

上手くいかないのは自分の能力不足に起因しないことがほとんどで,仕事の進め方がよろしくないそうです.自分のオリジナルの進め方ではなく,まずは優秀な人の行動を細部まで研究し,真似してみることが重要.若い人は我流の仕事で進めたがる傾向にあるらしいようです.

・自分本位な欲をもつことは悪いことではない

自分本位というのは功を立てたいなどの欲望のこと.それをもつこと自体は壁にぶつかり,成長の機会に繋がるので決して悪いことではないと述べています.しかし,人間は自分の能力を過大評価しがちだし,根拠なしの楽天家であるので自分の実力に向き合うことが大事である.とのこと.根拠なしの楽天家については↓にも同じようなことが書いてあったような.機会があったらこちらの本もご紹介します.

  研究職という私の立場で印象に残ったのは,日陰部署であるほど成長できる,という点です.いわゆる花形部署と呼ばれる部署に所属している人間は,会社への貢献度の大きさからふんぞり返っている人が多いですが,それは商品が偉いということで,その人自体はさして偉くありません.そして,商品が偉い=特別な手を加えなくても商品が売れていく,つまり花形部署の人間は努力をしないから成長しない…という多少乱暴な文脈を披露していました.それは置いておくとして,日陰部署の人間は商品に力を持たせようと努力するから成長できるという文章は日陰部署に所属する私にとって勇気を与えてくれるものでした(基礎研究を日陰部署と断じるのは我ながらいかがなものかと思いますが.). 

 あとはコミュニケーション能力が自分の成長の度合いを決めると書いていましたね.コミュニケーション能力は他人の要求をくみ取る能力,つまり仕事の向上,という意味合いだと思います.

 

 ネガティブなことを書くと,人生の先輩的立場からの言葉は個人的には全く刺さりませんでした.言葉一つ毎に数ページの章という構成なのですが,「運命を引き受けなさい」とか「人を愛して自分を大切にしなさい」のなどの章は何が言いたいのかわかりませんでした.著者がご苦労なさった経験を伝えたいということは理解しますが,人生を投影した,言いたい言葉が先に来すぎてに何も伝わりませんでした.「それでもなおという言葉が自分を磨き上げる」って,バナージ・リンクスじゃないんだから・・・.理解できない私が若すぎるのでしょうか.

 この本,遼君という新入社員の著者の(イマジナリー)甥っ子に向けた書簡文の体裁を取っています.自分の経験を織り込みやすくするための工夫だと思いますが,これをうすら寒いだとか説教くさい,と感じる人が一定数いるようです(アマゾンのレビューで散見される.).ちなみに書簡文で本を書こうとすると小説家みたいな物書きを本職とする人々でも難しいらしいです.森見登美彦が恋文の技術のあとがきにて漏らしていました.

 巷にはこの手の新入社員~若手社員向けの自己啓発本というのは溢れかえっています.大体同じようなことが書いてありますし,特に本書を薦めるというようなことはありませんが,学生→社会人のギャップに悩む前にこのような自己啓発本に触れておくのはよいことかもしれません.あとはビジネス本を読む踏み台(皮肉)にもなると思います.

 

 余談です.個人的な偏見ですが,タイトルでよくある「○○個の××」みたいなきちっとした数字でコンパクトにまとめた本とか問題集ってなんか信用できないんですよね.キリのいい数字を予め設定することで本に余計な内容や足りない事柄が生まれている…ような気がします.(このことはとある大学受験向け参考書の前書きに書いてあったのですが,その本もオビには○○個(キリの悪い数字)の例文を覚えるだけ!って書いてありましたね.)